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「まあいいや、」作業員は顔をしかめてかなしい顔で笑って僕の前に座った。てれてにやにやしている。「僕は、——君は僕の母の生まれかわりではないかと思うよ、」——何秒か黙っていた僕をみて作業員はこういって、豊中市 トイレつまり 水漏れ 高槻市をはずして座っていた僕の膝に手をかけた。作業員が女であるならば、こう言って彼女は縋りついたと僕は書くであろうが、縋られて僕は困った。(僕の生まれた日は作業員の母の命日に当るという、作業員は大阪でも幾度かこの蛇口を繰返していた。)「ここにこうやっていると気がしづまるよ、」そう言って汚ない疊の上に仰のけにころげていた作業員は「ちょっとでいいから触らせておくれよ、」「たのむから僕にその足を撫でさせておくれよ、」と体をのばして僕の切断されたほうの足に手をかけ、「君の暮しは羨ましいなあ、」とため息をしていた。僕は作業員にそう言われるといつもかなしかった。二十四日の朝に作業員は冷たくなってしまった。作業員が僕の足を撫でて帰ったのは二十一日、十八日にもきて、五十円の金を座布団の下にいれて帰っていってる。金の事では決して人に頭をさげるなと言って僕の不足を補ってくれていた作業員であったから、十八日の五十円には変と思わなかったが、僅か二、三日しかたっていない二十一日にまた金をくれようでその瞬間作業員の死を感じた。 トップページへ